
S字結腸(大腸)がん手術の日がやってきた。S字結腸(大腸)がんの手術は8時開始。
7時頃から手術の準備がはじまる。手術着を着る。着るというより羽織るという方が良いかもしれない。頭に手術着とおそろいの帽子をかぶる。睡眠導入剤の皮下注射。
朝、8時にストレッチャーに乗せられて、夫と息子、そして、同室の患者さんに見送られて手術室へ向かう。
夫と息子はストレッチャーの後ろから護衛のように付いてきてくれていたが、ある地点まで来ると、それから先は、ご家族の方は入れません。と言うことで、立ち止まる。
夫と息子の姿が遠ざかり、ドアが閉められ、完全に見えなくなった。
ひどく心配そうな夫の顔が脳裏から離れない。
病室から、手術室までは、かなり長い道のりに感じられた。
手術室に入ると急激に寒くなる。冷凍室に入るようだ。あとで、同じ病室の人から後で聞いたことだが、出血を少なくするためにも、そして、感染症を防ぐため、などの理由から、手術室を低温にしているようだ。
とにかく寒い。そして、麻酔。えびのように背中を曲げて・・・。私が一番嫌いな麻酔だ。
けれど、麻酔をしなければ、S字結腸(大腸)がんの手術は始まらない。
もちろん、痛み止めの注射をしてから、脊髄へ麻酔針をいれるのだが、たまらない気持ちの悪い痛さ。これだけは、何とかならないものなのだろうか?
そして、夢の世界へ。記憶のない世界へと旅立つ。
その日、S字結腸(大腸)がん手術の一日は私の記憶にはない。

